読了 『本格小説』
おもしろかった。途中でやめられず、昨夜2時に読み終わる。
日本版「嵐が丘」。ヒースクリフに「中卒の組立工、NYの億万長者になる」の大根田勝美をモデルとして使い、水村美苗もアメリカ育ちの小説家として登場させて虚々実々に組み立ててある。
小説ではヒースクリフ、東太郎は中国人との混血として描いてあったりして事実と異なる部分もずいぶん多いわけであるが実際のエピソードも巧みに取り込まれていてどこまでが本当でどこからが創作なのかの判断がむずかしく誤解もずいぶんされたことから、大根田氏は上記の自伝を出版した。
私は朝日新聞土曜版の連載「元気のひみつ」欄に登場したときにはじめてこの人をしり、人生への構えというものに惹きつけられ日記を書いている。http://d.hatena.ne.jp/takikio/20140122/1390358569
その大根田勝美氏への関心の方からこの小説を読もうと思ったわけだが、水村美苗版JAPAN嵐が丘はとてもおもしろかった。
日本では表だっては取り上げられない、でも人々の心の奥にはある、階層社会への思いを様々な人物を登場させて語らせ、金持ちも成金と本物を登場させ、今は絶滅した職種である女中を語り手に使って、それはそれは巧みに話をつくっていく。
ヒロインよう子ちゃんの描き方も秀逸で、そのよう子ちゃんの太郎ちゃん、雅之ちゃんとの関係もありうるんだなぁ、こんな絆と思わず納得させられてしまう。
心のひだが細やかにでも時にダイナミックに描かれていて、特に語り手、フミ子お姉さんのキャラクター、スタンスに惹かれる。分を守るこんな人々に支えられて中産階級が中産階級あり得たのだなと思うし、また春絵、夏絵、冬絵の三姉妹の描き方も実におもしろく、特に春絵を通して上流階級への羨望、下流への優越感、蔑視、嫉み、意地悪などおよそ人間という生き物の心の中に去来する様々な思いが描かれていて、この小説の厚味をつくっていた。
堪能いたしました。。。
- 作者: 水村美苗
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