十王口

先日、湯木美術館で3年ほど前に買い求めた「平成六年秋季展 水差と建水」のパンフレットをみていたら、

この美術館で販売されている過去の展覧会のパンフレット(図録というのは不似合いな30ページほどのもの)は茶に関する器物の勉強になるんです。簡潔な説明と適度な数で頭に残りやすい。行くと時々買います。

古瀬戸十王口水差というのが目に付きました。

口縁部の外反した形は、それが閻魔王の冠の形に似ているところから十王口の名称で呼ばれていると書いてあります。

なら閻魔口とすればいいのに、十王って何?

と思い、半年ほど前に買い、愛用している電子辞書に十王と打ち込んでみました。

すると十王経に説く、冥府で死者を裁くという王とあり、

秦広王
初江王
宋帝王
五官王
閻魔王
変成王
太山府君
平等王
都市王
五道転輪王
の称。中有(ちゅうう)(人が死んでから次の生を受けるまでの期間。7日間を1期とし、第7の49日までとする。)の死者が冥府に入り、初七日に秦広王の庁に至り、以下順次に、二七日、三七日、四七日、五七日、六七日、七七日、百箇日、一周年、三周年に各王の庁を過ぎて娑婆でした罪の裁断を受け、これによって来世の生所が決まるという。

私はいい年をして閻魔様しか知りませんでした。10人もおられたんですね!

さらにググってみると、中国に伝わった仏教が道教と習合していく過程で晩唐の時期に十王信仰が成立し、日本では平安末期に仏教由来の末法思想や冥界思想と共に広く浸透し、鎌倉時代には十王をそれぞれ十仏と相対させるようになり、時代が下るにつれてその数も増え、江戸時代には十三仏信仰なるものが生まれるに至ったとありました。

ちなみに仏様との対応もコピーペースト。

秦広王不動明王
初江王(釈迦如来
宋帝王文殊菩薩
五官王普賢菩薩
閻魔王地蔵菩薩
変成王弥勒菩薩
太山府君薬師如来
平等王(観世音菩薩)
都市王勢至菩薩
五道転輪王阿弥陀如来

いくつになっても知らないことを知るのは楽しいものです。