お日様は偉大(追記あり)

昨日は「太陽熱の科学---市民による等身大の技術を」という講演を聴いた。

川崎製鉄のエンジニアだった人で、国立天文台の「すばる」望遠鏡、宇宙科学研究所の科学衛星追跡用アンテナ、航空宇宙研究所の極超音速風洞、民間の超伝導放射光設備、放射線医学総合研究所重粒子線ガン治療機、原子力研究所の臨界核融合実験炉、東京大学宇宙船研究所のガンマ線望遠鏡、原子力研究所の中性子ビームシャッターシステム、国立天文台のALMA望遠鏡と超高度の機器の製作に携わってきた人である。

昨年11月に上京する際に西明石始発のこだまの自由席に座ったときにたまたま後の席に久しぶりに会う、どうも後輩らしき人が座っていて、そしてたまたまその横が空いていて、ちょうど私の席の真後ろに座ることになった。

よく通る声で二人が延々と話し始めた。

太陽熱ボイラーの試作をしてみたとか、製造業の現場での技術の伝承がきちんとされなくなったことへの危惧、ちょうどスタップ細胞がマスコミをにぎわせていたころでそのことへの感想やら、化石燃料の枯渇に対して人類はどう取り組むべきなのか、原発の今後etc、etc

はじめは聞き流していたがそのうちこの人たちはただ者ではないぞと思い始め、聞き耳をたてはじめた私。品川で彼らが下車するまで3時間余り、対話形式の講義を聴いている気分だった。しかも深い。そして胸を打ったのはでは具体的にどう変えていくのかという方策を探っている話だった。

品川に着いて彼らが降車のために移動しかけたとき、ためらいももちろんあったがこの機を逃したら私はこの人たちに二度と会うことはないと思い、勇気を出して追いかけていき、「ずっと耳をそばだててお話し聞いていました。もっと聞きたかったです」と言って名刺をもらった。

びっくりされたがすっと名刺を渡され、ここにメールいただいたらと言われた。

そして数日して失礼のお詫びとお礼をしたためたメールを年長の方のほうに送ると、ご自分に関する資料が送られてきた。

その内容も興味深く、私は聞いた話を私だけにしまっておくのではなく、もっとたくさんの人に聞いてもらいたいと思った。

勤めていた頃の友人が空き家を買い取って「かがく教育研究所」を立ち上げ、改造して作った実験室で毎月、理科の教師や理科好きの市民対象の講演会を開いている。そこで講演してもらえないかと考え、連絡をそれぞれにとって開催の運びになったのだ。

やってこられた仕事の話だけで3日や4日はかかる人である。今回は今されていることに焦点を当てて語っていただいた。

某国立高専の一期生で、恩師の言葉に従って自分のやってきた仕事、その技術を後輩に伝えていく試み、テクノスカフェにやってきた後輩(ジャイカでアフリカに派遣され一時帰国していた)の「乳児死亡率が高いのは汚れた水で殺菌もせずにミルクを作って飲ませているからなのだが、何とか太陽熱で水をわかし煮沸殺菌できないものだろうか」という依頼に応えて、この人はその場で計算、原理的に可能や、作ってみようと始められ、安価な量産型太陽熱ボイラーをつくり、売るところまで来ている。キットにしてあって1時間ほどで組み立てられる。日本での用途は風呂。

原理は太陽光の濃縮。虫眼鏡で光を集めて紙を焦がすのと同じ原理。30枚ほどの細長い鏡(板にアルミ箔をはったもの)、傾斜をつけてあるのでその鏡にあたって反射した30枚の鏡からきた光がパイプの中を流れる水に当たるようにしてある。この水のパイプの端は水道の蛇口につながったホースとつながり、もう一方の端につながるホースは風呂の浴槽につなげばよい。10時から14時までの日照で60℃のお湯250リットルがつくれる性能のキットにしてある。(3.6メートル×2メートルの大きさ)

このパイプに水ではなくてサツマイモを入れてやると1時間以内でほくほくの焼き芋ができる。300℃にまで温度が上がるのだ。

この原理で水蒸気を作ればタービンを回して発電も可能。

ドイツの学者が計算している。サハラ砂漠にあたる太陽光を使ってこの原理で発電すると、計算上はサハラ砂漠全土の何分の一かの面積でじゅうぶん全世界の必要電気量がまかなえるという。

原子力発電にたよることなく、そしてまた量の限られた化石燃料を使うことなく、少なくとも10億年は寿命がある太陽を活用するエネルギーシステムをつくっていこうではないか。本気でこの人は動いている。

このボイラーに関心を持たれたら「シエラテクニクス」で検索してみてください。

whitewitchさん、yonnbabaさん、inuwanさん、nikkoukisugeさん、コメント有り難うございます。

この人のスタンスは、
・公には既にお金がない
・我々の時代の蓄えはすべて使ってしまった
・(補助金などの)公への負担要請は子や孫に負担を強いること
・できる限りの努力を自分たちでしよう
・日曜大工でできるエコから

私はこの姿勢を聞いてハッとしました。