新聞記事から

昨日の朝日新聞朝刊「私の視点」。ドイツの大学教授ミランダ・シュラーズさんと北大教授吉田文和さんの共著の記事。

日独が共同で進める好機 原発ゼロ

以下引用

ドイツは昨年6月、「2022年までの原発廃止」を決定した。原発は事故になった場合のリスクが大きすぎると、東京電力福島第一原発の事故から学んだのが、最大の理由だ。エネルギー政策として原子力以外にも、省エネや再生可能エネルギーという選択肢があり、その道を進めば、技術開発や市場の獲得、雇用の場の創造により、経済戦略的にもドイツにプラスになると考えたのも大きい。

 原発廃止を決めたあと、ドイツは各都市、地域ごとにエネルギー転換計画を立てた。省エネと再生可能エネルギーの拡大、エネルギー自給に向けた計画作りを進め、「新しい元気」が出てきている。町のエネルギーを自分たちで賄おうと、地方のエネルギー協同組合が昨年だけで170もでき、風力や太陽光発電の導入が進んだ。それ以降の太陽光発電の累積導入量は1100万キロワットで、福島事故後に停止した原発8基の800万キロワットを超えた。

 さらに脱原発と温暖化対策を両立するため、一年あたりの省エネ率の約2%増、再生可能エネルギーの約2%増の目標を掲げ、熱電併給や省エネを図っている。

 日本政府も14日に発表した革新的エネルギー・環境戦略で、「30年代に原発ゼロ」を打ち出した。この線に沿って原発削減の枠組みを決め、足元からエネルギー転換、省エネと資源の発見、見直しを進めるべきだ。それこそが地域の元気につながるに違いない。

 我々二人はこのほど、福島の被害地と北海道の原発立地地域を調査した。道路やトンネルなど公共施設の立派さとは裏腹に、廃校や廃屋が多く、住民たちの生活の貧弱さが目に付いた。原発を誘致しても過疎化には歯止めがかからない。投資の流れを新しいエネルギーや健康、教育に変える発想が肝要だとあらためて痛感した。

 日本とドイツはともに経済成長期に原発を導入、拡大させた。脱原発という共通の課題に直面することになった現在、省エネと太陽光、風力、地熱、バイオマスについて日独共同でプロジェクトを進める好機といえる。放射性廃棄物の貯蔵方法や場所、その決定の仕方でも交流が可能だ。

 要は日本がどういう戦略を立てるかに尽きる。脱原発の戦略と体制を練り直し、成長が望めて得意な分野に注力する。省エネと再生可能エネルギーの技術を持ちながら、国内市場を開拓できず、世界で勝つ技術に十分育てられなかった失敗を繰り返してはならない。
 ドイツは日本の原発事故に学んで脱原発を決め、エネルギー転換を本格化した。次は日本がドイツの先行事例に学ぶ番である。

がんばろうよ、日本も。