新聞記事から 人生の贈りもの 日本画家 堀文子(93歳) 5回シリーズの1回目

3/4まで愛知県の名都美術館で展覧会が開かれている。93歳を迎えますます創作に意欲的ですね。

私にとって絵は日記でありいまの自画像だ。昨年の個展ではイタリアの古代エトルリア文明をテーマにした作品を制作した。私はいま、古代の文明に夢中。エトルリアのつぼには人や動物が生き生きと描かれている。「誰々の作」というものがない時代、美は観賞用ではなかったからだ。美術品として完成した美は理想的で冷たくなってしまう。

東京から神奈川県大礒に転居されて40年以上になりますね。

森の中にいないと落ち着かない極めて原始的な人間なのだ。生家は麹町で徳川の時代が十分残っていて自然に恵まれていたが大人になってあの自然は人が作った自然と気が付き、失望した。だから本物の自然に触れていたいと思うのかもしれない。

厳格な家庭で育たれたのですね。

父は学者、母も松代藩の学問所の子孫、二人とも理屈っぽくて情緒的なところはなかった。常に敬語で礼儀正しく厳しくしつけられた。6人兄弟の三女だが女の地位は低く、三女の私の位は最低で弟付きの女中は私付きの女中より威張っていた。家にいても大事にされず面白くないので裏口を抜けては外に遊びに出かけた。私の放浪癖はそのころからだ。
本当に悪がきでいえないようなこともずいぶんした。昔は悪戯をすると大人はよその子であろうと叱りつけた。ちやほやされずにそだったおかげで生きる抵抗力がつき、「いまは辛抱してもいつかは成し遂げてみせる」という根性ができた。

1/23から1/27まで夕刊に掲載された。読み進むうちにどんなことを考えながら絵を描いてこられたのか、この人の魅力的な絵のうらに秘められたあつい思いを知り、たいへんひきつけられた。端折っているので文責はtakikioにあり。