西宮の夜

西宮は文楽の源流「傀儡師」発祥の地。文楽と縁の深い町ということを知った。一方で酒の町。この「酒」と「文楽」という二つの要素を造り酒屋で同時に愉しむ「酒屋万来文楽」。今年で4回目とのこと。

『良弁杉由来』は東大寺を開山した良弁が幼いころに鷲にさらわれたところを義淵僧正に救われ、成人して立派な僧になったあとに、母と再会したという伝説を取り上げた作品。

幼児光丸(良弁)が山鷲にさらわれる「志賀の段」
母渚の方が東大寺の良弁僧正の鷲伝説を聞く「桜宮物狂いの段」
東大寺にかけつけた渚の方がそこで出会った僧に、杉の木に貼り付ける身の上を記した張り紙を書いてもらう「東大寺の段」
再会を果たす全段最大の山場が「二月堂の段」

この「二月堂の段」が白鷹禄水苑で演じられた。

浄瑠璃は竹本千歳大夫の大熱演。
三味線は鶴澤藤蔵。これまた熱演で途中、弦が切れる。
人形 渚の方 吉田文雀人間国宝
   良弁  吉田和生

小さなホールで手を伸ばせば届くところで演じられるので緊迫感があり、かつてそうだったであろう芝居小屋の濃い空気感が味わえた。

会場となった白鷹禄水苑をとりしきり、会の進行役をつとめるのは辰馬朱満子さん。白鷹酒造のお嬢さんとのこと。和服がにあい、弁舌も巧みで佳人だった。

公演の後、吉田和生さんが裏話等を交えたトークをし、観客の素朴な疑問にも気さくに応じてくださった。これがよかった。文楽が身近に感じられた。私も質問。

そのあとの出演者を囲んでの文楽ほろ酔い談義にも参加。蔵出し新酒が飲み放題。つれあいはご満悦。