「野火」を観に行く

本日、シネ・リーブル神戸にて15:20からの上映を観る。
意外に観客数は少なくなく、客席の半分は埋まっていた。
大半はシルバー。男女比は7:3ぐらいかな。
この夏にやっておきたいこと、やっておかなければならないことの一つだった。

デジタルカラー画像だと思うし、今、生きている俳優が演じるのだから、どんなにメーキャップしても、肌の色つやはよく、白目も明晰で、歯も美しく、それはやむをえない。

それに資金集めに苦労しての制作だから、俳優を長期間、拘束は出来ないだろうし、そのウソさ加減は目をつぶらなくてはいけないのだろう。

(しかし、この映画でのリリーフランキーはイマイチである。というか薄くなった頭、飄々とした服装、皮脂が少なそうな肌といった彼の外見がずいぶん普段の演技を助けているのではないかしらん、それが使えない、決まりの軍服、帽子でしかも皮膚を黒くテカらせたメーキャップは持ち味を消し、目つきや表情だけでの演技は彼には難度が高いのかも知れない。ごめんなさい、リリーさん、洞窟おじさんの演技は高く買っている私です。)

監督であり、主演した塚本晋也は根性が座っていた。

映画評論家の佐藤忠男が書いている。「いままでの、とかく実験的な特異な映像作家というふうに見られがちだった塚本晋也大岡昇平の有名な小説と真っ向から取り組み、特異なところはなにもない。ただ多くの人に知って欲しい戦争の真実を見ようとするきまじめな態度がここにある。」

普通の人が実際の戦場に行くとこういうことになってしまうのだ、こんな不条理にさらされるのだ、理路などなくなり今現在の飢餓をいかにしのぐかで動いてしまうのだ、人肉にまで手を出すのだと訴え続ける。その生き地獄とフィリピンの美しい自然との対比。そして現代人がどんどん希薄にしていっている身体性をゆさぶる。

伍長役の中村達也がおもしろいことをパンフレットの中でインタビューに応えて言っている。参加に当たっての監督からの要望は痩せて、髭を伸ばして、日焼けをしておいてくださいということだったので、撮影前、自宅から練習スタジオ(この人はミュージシャンが本職)まで上半身裸で自転車通勤していたらある日、交番からお巡りさんが飛んできて「勘弁してください。上に何か羽織って(タトゥーを隠して)ください」と注意されたそうな。




昨日は淡路に義姉の陣中見舞い。義兄は危機は逃れたが鼻から管を入れての栄養摂取は変わらず、主治医に胃瘻をすすめられている。車に乗れない義姉の様々な買い物に付き合う。その中で春に母上を亡くした義姉の友人宅へお供えを持っていく。友人は大変喜ばれて、焼香してやってほしいと私まで家に上がらせていただいた。

101歳で亡くなった母上の戒名に胸打たれる。「百桜◯寿」とある。◯は名前の一字が入る。桜の季節に100歳を越して亡くなったこと、そして100歳過ぎると寿の字を入れるとお寺さんが言われたそうで、こんないい戒名をいただいて息子の私も喜んでいるんですわと言われた。天寿を全うしてあの世に行ける幸せ、平和だからこそ。


お風呂に入っていると虫の声に気がついた。風も熱風ではなくなり、確実に地球はまわっている。