夏の旅(1)

大学時代の友人と「今度、夫婦で旅をしない?」と言っていたことを実現。去年、中学の同窓生と小さな山登りをしたときに評判を聞いた大山のペンションに予約を入れたのが4月。

約束の7/5。中国縦貫道から米子自動車道に入るにつれ、雨。それもどんどんひどくなる。

大山寺の近くまで来ると大雨。宿屋も兼ねた食堂で大山そばを食べてから、車を駐車場においておいて、大神山神社の奥宮まで上がる。

参道の脇に志賀直哉の暗夜行路の舞台になったことが記された碑がある。

奥宮に参拝。拝殿の奥には西日本最大規模の白檀塗りの柱があることが記されている。お茶をまじめに取り組むようになって知った白檀塗り。私の知っているのは陶器の香合に施された白檀塗り。金箔を貼り、その上から朱漆を幾重にも重ね塗する加工を白檀塗という。陶器だと金箔を貼っても接着性に欠けるのだろう、はがれ落ちている場合がある。形物香合番付の上位に来る大亀香合はその甲羅の白檀塗りがはがれ落ちているモノも多い。考えてみれば漆技法のひとつなのだから、木に施すのが普通なのだ。その独特の輝きを持つ白檀塗りの柱を拝見したかったが、宮司さんが我々のずぶ濡れの足下を見て、その濡れ具合ではねぇとやんわりことわられた。それぐらいの大雨。

3時半のチェックインまでにはまだまだ時間がある。さっきの食堂に貼ってあった地図にあった植田正治写真美術館に行くことにする。

これが楽しかった。

田園の中に突如あらわれるモダンなコンクリートの大きな建物。

http://www.sanin.com/site/page/daisen2/shisetu/ueda/

写真家植田正治という名を初めて聞いたのはNHKのグレーテルの竈を観ていたときに甘い物好きだった夫のために妻が当時ではめずらしい洋菓子をつくったという紹介でたしかアイスクリームを残されたレシピ通りにつくってみる内容だった。

そのときに写真もいくつか紹介されたのだが、鳥取砂丘を背景に撮った家族写真はとても斬新で、しかも私の生まれ年にこんなモダンな写真を撮る人ってどんな人?と思ったのだった。

その人にこんな形で会える面白さ。

番組で観た写真に再会したのもうれしかったけれど、この建物にも感激したのだ。

時間が許せば何時間でもぼーっとしていたかった。

天気がよければ、この大きな窓には絵葉書よろしく大山の雄姿がおさまる。そして雨の日も、ぽつんぽつんと落ちる雨だれの波紋の干渉がとてもリズミカルでみていて飽きない。飽きないだけじゃなくとても心が落ち着く。

そして、植田正治を紹介するビデオ上映の部屋は大きなピンホールカメラの暗室になっていて、これも晴れていれば、壁に逆さの大山が映るはずなのだった。

http://www.japro.com/ueda/

(つづく)