今日のプレゼント

今日はお茶の稽古場のある町の観光客向け公営お茶室の当番で、朝10時から夕方4時まで詰めた。26人のお客様にお茶を点てた。

終わりが近づいて片付けはじめ、釜は湯を捨てて電熱の風炉で仲間の一人が乾かしかけた。彼女は責任感の強い人でまかせておけば大丈夫なのはわかっていたが、電熱器を切ったかどうかの確認は私の仕事にしようと思っていたのに途中から忘れてしまった。

気がついたのは解散してしばらく走ってから。路肩に車を止め、彼女の携帯に電話をする。すると電話に出たのはご主人で、携帯を持たずに家を出ていて家にある携帯にかかっているとのこと。事情を話すと、車で迎えに行っているのは娘なので娘の携帯にかけて確認しておきます、5分して携帯に電話しなかったら電源を切った確認ができたということにしますということになり待っていると、かかってきた。運転中ということなのだろう、電話に出ませんとのこと。そして、こちらで何とかこのあとも電話をしてちゃんと対応しておくのでそのままお帰りくださいと言ってくださる。

5分ぐらい、走っただろうか、連絡がついてもしも電源を切っていなかったということになればそれからの引き返しになる。私なら今、引き返せる。自分のちと神経質なこだわりに彼女やご家族を巻き込むのはやめよう。引き返そう!ご主人にその旨、連絡を入れておく。

夕方の渋滞も始まり、倍の時間がかかって戻る。路上駐車はできないエリアなので、駐車場に入れてお茶室に引き返すと、ちゃんと釜は乾き、電源はもちろん切ってありましたとのこと。これで枕を高くして寝られる。

たった5分足らずの駐車に代金600円を払い、駐車場を出る。

結構な通行量なので向こう側の車線に出るのは一苦労しそうで反対向きになり、遠回りになるが手前の車線に出る。国道に出るため、左折するとそこはかっての職場。最後の職場の一つ前に教頭として勤めた特別支援学校。車を進めていくと女子生徒が下校していた。横顔を見てはっとする。幼稚部からある特別支援学校、私が勤めた頃は幼稚部だった子だ。顔に障害があり、一目見てわかった。とても印象深かった子だ。それは重なる障害を持つのにいつも柔和な顔つきで、出会うと私がほっと和ませてもらった子だった。お母さんも素敵な人だった。その子が高等部生になって道を歩いている。そして胸を打ったのはその幼児の時と同じ柔和な顔つき、まなざしだったことだ。心にあついモノが満ちてくる。

回り道して、時間の無駄遣いと人に言われそうなことをして、でも神様はちゃんとプレゼントを準備してくれていた。