元素をめぐる美と驚き−周期表に秘められた物語
年末から読みすすめた本をやっと読了。
新聞に出た、こんな広告、「エピソード満載」に惹かれ、注文したのだ。
届いた本「元素をめぐる美と驚き−周期表に秘められた物語」(A)は、
- 作者: ヒューオールダシー=ウィリアムズ,Hugh Aldersey‐Williams,安部恵子,鍛原多惠子,田淵健太,松井信彦
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/11/01
- メディア: 単行本
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一昨年、やはり新聞広告で目にして買ったのが、「世界で一番美しい元素図鑑」(B)
- 作者: セオドア・グレイ,若林文高,ニック・マン,武井摩利
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2010/10/22
- メディア: 単行本
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写真集で美しい本なのだが、如何せん大きくて重たい。本棚に眠っていた。
A、B、二冊の本を並べ、Aを読みながら、Bで確認。
どちらも翻訳本。
感じたこと−−−−−
同じ翻訳でも読みやすさが大きく異なる。
武井摩利さんという人が訳すBは簡潔で明解で読みやすい。
Aは4人で訳しているからか、こなれていない。もってまわった、結局何が言いたいんだと毒づきたくなる「英文和訳」。監修も甘い。日本ではセレンとよんでいる元素をセレニウムと訳している。もっと読みやすくできるはずなのになぁ、残念至極。
ところで、この間の日曜日、朝日新聞の読書欄にAの書評が出た。最近の芥川賞作家が書いている。
「好奇心に駆られて読みふけった。」とある。
本当?
本当なら「アウアー光」や「相続用の粉」や「ワールドワイドウェブ」や「蒼ざめた馬のカクテル」や「私たちのラジウム夫人」のどれかが話に出てくるはず。読みふけるほどだったのなら。ねぇねぇ、聞いてと紹介したくなる話がいっぱい。
なのにありふれた元素名にちなむ話題に三分の一も費やしてお茶を濁している。それからメンデレーエフがノーベル化学賞をもらえなかった理由は希ガスの族がまるごと抜けていたからだと書いているが「ネオンの深紅色の光」と題したところに希ガスのうち5つも見つけたラムゼーの仕事が紹介されてはいてもそのような記述は見当たらない。
ちょっとがっかりしましたよ。読者をなめてはいけませんよ。
すみません。あとで読み返すと「メンデレーエフがノーベル化学賞をもらえなかった理由は希ガスの族がまるごと抜けていたからだ」とちゃんと書いてありました。これは私の読み落としでした。
高価な本だけれどBはホントにお薦め、優れた本。ウィットに富んだ文章でわかりやすくまとめているし、写真が秀逸。著者のセオドラ・グレイは写真を撮ったニック・マンに謝辞を表している。最初ニック・マンを、著者は元素コレクターでもあるのだが、作業場周辺に飛び散ったガドリニウムの粉末を掃除する作業員として雇ったがたちまちのうちに右腕となって素晴らしい写真を撮ってくれたと。
びっくりし、少し悲しかったのは「Printed in China」。
「Made in China」だけじゃなくて「Printed in China」の時代も始まっている?
実は4月から「化学基礎」を教えることになってその足慣らしもあって、本を読みました。
「私たちのラジウム夫人」の内容は日を変えて紹介したいと思っています。