高円宮妃久子さまのなさったこと

高円宮妃久子さまの博士論文はとても膨大な量で読むには時間がかかる。

論文審査員の評がまとめてあるのを読んだ。

これまでは単に好事家の収集の対象であるかのように考えられてきた日本固有の美術工芸品である「根付」を、改めて研究の対象として取り上げ、総合的に論じることを通して、日本美術史の中に正統的に位置づけようとする試みである。

根付に関する歴史、主題、素材、作家等を考察した基礎的研究と世界のコレクターによる根付の各コレクションの紹介と高円宮コレクションの綿密な調査に基づく資料の分析で構成され、申請者はコレクターとしての主観を重視した目と研究者としての客観を重視した目の二つの視座をもって論文を構成している。

根付の評価に関する記述は優れている。根付の評価を特に困難にしている三つの理由、第一に根付けの素材は多岐にわたっており木彫・牙彫、漆器、蒔絵、陶磁器などに関する広く深い知識が求められ、第二にその各々のの分野においてそれぞれ固有の作品が存在するため結果としては根付けに重要な位置を与えられないことになる。第三にそれゆえ根付固有の特性についての知識と経験が必要であるという点である。

例えば、根付けの条件として必須のできる限り形状が丸く、日用品であるから帯や着物を傷めず、またそれ自身破損しないように丈夫であることや紐通しがあることなど根付け固有の質や形状に関する豊富な知識が必要であるのに加え手にとって多くの根付けを見ることにより培われた実践的な鑑識眼が欠かせない。その上で根付を受容する際の感性的評価が重要である。従来、日本の伝統芸術がわびさびという限られた美的概念でのみ考えられがちであったのが根付けという日本の伝統的美術工芸を媒介にして「捻り」「たくみ」「しゃれ」「あたたかみ」「なれ」などという新しい、美的カテゴリーを日本的美的概念の中に付け加えることが可能であることを示唆する論文となっている。

大阪芸術大学のHPにいくと学術論文そのものも読めるようになっている。
http://www.grad.osaka-geidai.ac.jp/hakusi/k_ronbun2.html

「捻り」については高円宮殿下が根付の評価に必要なものとして指摘されていたらしい。

妃殿下の亡くなられた殿下への思慕が深いものであることも伝わり、ご夫婦で大きな貢献を日本になさったのだと思う。