平山郁夫展

文化博物館でやっている平山郁夫展につれあいと行ってきた。

故郷である尾道瀬戸田町生口島にある平山郁夫美術館に収蔵されている作品の展示とのこと。規模は大きくないが、本画と同じ大きさでつくられる下絵や自分の生い立ちを書いた文章とスケッチをセットにした展示で親しみがわく。

昭和20年8月6日、広島にある勤労動員の工場で被爆した時のことを振り返る文章とスケッチがあった。その日一日広島の街を歩き回り、夜遅く駅に停車していた車両にあがりこんで熟睡。朝が来て目が覚めると動いていてちょうど西行きの列車でいつもの駅で降りて帰宅。家人に見てきたことを話しても誰も信じなかった。この日の経験は強烈過ぎて、広島に通うのは辛く、通っていた修道中学から別の学校に転校する。

転校した学校には祖母の兄のところに寄宿して通った。この大おじさんは東京美術学校の教授をしていた人で定年になって故郷に帰ってきていた。高等学校受験のためによく勉強したがあるとき、この大おじが東京美術学校受験を薦める。「高等学校をめざせと言ってきたのになぜ?」とたずねると「東京で芸術ばかをいっぱいみてきた。芸術ですぐれているだけでは大成しない。幅広い知識も必要なんだ。学問も必要なのだ。そこで勉強させたくて黙っていた。」

今でいう教育ママであった厳しい母のことを書きながら、その肖像画は愛情がにじみ出てとても美人に描いている。

まじめで心持のしっかりした人であったことが伝わる。被爆体験から平和への強い思いが人並みはずれていたことも伝わる。

副題がこの展覧会にはついていて「次世代への伝言メッセージ」とある。