松井冬子その2

「なごみ」をもう一度読み直してみた。

『今、華のひと』という今年から始まった連載の第一回に登場。

母が裏千家茶道の教授で家で教えていたので、幼少時から掛け軸を見慣れていたし、自室の襖絵が渡辺崋山に絵を学んだ福田半香の南画絵だったから、日本画を特に意識することなく育った。ピカソモナリザのレプリカにひかれて画家になろうと思い、油絵から出発したが、予備校時代に長谷川等伯の「松林図屏風」を見て日本画の素晴らしさに目覚める。自分にとって「松林図屏風」は「モナ・リザ」に匹敵するものだった。

日本画の主流は今、厚手の和紙に厚く絵具を盛り上げて描く方法だが、自分には絹地に墨で描いていくことが体感的に気持ちよく、その方法で描いている。しかし、丸山応挙や河鍋暁斎の線の描き方に到底及ばない。筆を使いこなせていない。筆に自信のなさがある。描いていてもはずかしいなと思う気持ちがまだまだ残っている。

作品は軸装にすることが多い。それはコンパクトで持ち運びしやすいのと、現代的なテーマを絹地に描いてさらに軸装することが新しいと感じたのだ。芸大の先生には床の間のある家なんて今はないし、額装にすべきだといわれたのだが私は逆に軸装の方が新しいと感じたのだ。

お茶名も持ち、東京芸大在学中は茶道部に入っていた。これがすばらしかった。全員アーティストなので茶杓も茶碗も棗も建水も全部自分たちで作る。菓子、懐石料理以外はすべて揃った。最高だった。

茶道の取り合わせの美学が自分の作品制作に生きているかもしれない。

というようなことをインタビューにこたえていて、やはりすごい人だなと思った次第。