彼女らしさ

通夜に行ってきた。
ご主人が山で転落死。
よく仕事を助けてくれた人だった。彼女と彼女の仲間と一緒に仕事がしたくて私はそこに5年も勤めたのだった。
今日、通夜に出席して、このご主人あってこその、このご主人に支えられてこその勤務だったのだなとわかった。

彼女も来年3月、定年。二人の生活がやっと楽しめると思っていた矢先。

登山歴40年。冬山装備で登山計画書もきちんと提出しての山行き。

祭壇は彼女の希望で、花で、好きだった山を形どり、丸いアレンジメントが4つ、その前に並べてある。春夏秋冬をあらわしている。四季を通して大好きだったその山に通ったご主人。

喪主として彼女らしいあいさつをした。借り物ではない自分の言葉で。

ご主人の関係の参列者の数倍もの弔問客がひきもきらず、式場には入りきらなかった。親身の彼女のかかわりでどれだけの人が救われてきただろう。そのことがよくわかった。

帰宅して挨拶状を読む。

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今、初冬の優しい日の光の中に、黙々と庭いじりをしている夫の姿が思い浮かびます。いつもなら、家中の窓を外して綺麗に拭いてくれた季節。今年は冬用のタイヤ、誰に換えてもらえばいいのでしょう。

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喪失感はこれから彼女をおそっていくだろうが、今まで以上に仕事に打ち込む姿が目に見える。

少なくとも彼女は悲しみ、悲嘆に打ち勝って、ご主人の死をすでにこの4日間で受け入れている。新幹線からしか見たことのないその山の麓であぁ、彼はこの気高さ、荘厳さに惹かれて20回も通ったのかと思ったと言った。

それぞれを認め合い絆は深いが、依存しあう関係とは違っていたのだなと思わせた。